【税務判例】ソーラーパネルはいつから経費に?「事業の用に供した日」の重要判例
「減価償却」は、高額な資産(車や機械など)を買ったときに、その費用を一度に経費にするのではなく、数年間に分けて経費にしていくルールです。
この減価償却は、その資産を「事業の用に供した日」(=仕事で使い始めた日)からスタートします。
では、この「使い始めた日」とは、具体的にいつを指すのでしょうか?
「納品された日」でしょうか? それとも「実際に稼働した日」でしょうか?
この点が争点となった、太陽光発電システム(ソーラーパネル)に関する判例(東京地裁 令和2年1月17日判決)をご紹介します。
どんな事件だった?
ある会社(A社)が、売電(電気を電力会社に売って利益を得る)のために太陽光発電システムを導入しました。
* 平成28年3月28日: 太陽光発電システム本体が、工事業者から引き渡されました(この日付はA社の事業年度内)。
* 平成28年9月27日: 電力会社の電力系統につなぐ工事(系統連系)が完了しました(この日付はA社の次の事業年度)。
A社の主張:
「システムは3月28日に引き渡しを受けている。この事業年度(平成28年3月期)から減価償却費を損金(経費)にできるはずだ」。
税務署の主張:
「いや、売電目的のシステムなのだから、実際に電気を売れる状態(系統連系)になった9月27日まで『事業の用に供した』とは言えない。だから3月期の経費にはできない」。
裁判所の判断:納税者の敗訴(棄却)
結論から言うと、裁判所は税務署の主張を認め、A社の請求を棄却しました。
裁判所は、「事業の用に供した日」を判断するために、その資産の「本来の機能」が何かを重視しました。
裁判所の考え方
* この資産の「本来の機能」は何か?
この太陽光発電システムは、自社で電気を使うためではなく、「電気事業者に売電すること」で対価を得るのが目的(本来の機能)でした。
* いつから「本来の機能」を発揮できたか?
システム本体が設置されて「発電」ができるだけでは、売電はできません。
電力系統に接続(系統連系)し、「売電することが物理的に可能になった」とき初めて、本来の機能を発揮できる状態になったと言えます。
* 結論
したがって、A社がこのシステムを「事業の用に供した」のは、系統連系工事が完了し、売電が物理的に可能となった「平成28年9月27日」であると判断しました。
その結果、A社は平成28年3月期の経費(損金)として減価償却費を計上することは認められませんでした。
補足:工事負担金(繰延資産)も同じ
A社は電力系統につなぐための「工事負担金」も、3月期の経費(繰延資産の償却費)として計上していました。
これについても裁判所は、「工事が完了して売電が可能になって初めて支出の効果が生じる」として、9月27日の属する事業年度の経費とすべき、と判断しています。
まとめ
この判例は、減価償却の開始時期について、「単にモノが納品された日」ではなく、「その資産が本来の目的・用途のために、いつでも稼働できる状態になった日」であることを明確にした重要な事例です。
資産を購入した時期と、実際に使えるようになる時期がズレる場合は、特に注意が必要です。
特に決算期末の取得については慎重に判断することをお勧めします。