【令和5年統計】相続税は「10人に1人」の時代へ。過去最高の課税割合9.9%から見えること
「相続税なんて、お金持ちだけの話でしょう?」
これは、私たちが日々の業務でお客様から非常によく耳にする言葉です。しかし、先日国税庁から発表された令和5年(2023年)分の相続税申告実績を見ると、その認識を少しアップデートする必要があるかもしれません。
最新のデータは、相続税がもはや「他人事」ではなく、「10人に1人」が直面する身近な問題になりつつある現実を突きつけています。
1. 課税割合は過去最高の「9.9%」
まず、最も衝撃的な数字からご紹介します。
令和5年中に亡くなられた方(被相続人数)は約157.6万人。そのうち、相続税の申告書を提出した方(課税対象となった被相続人数)は約15.6万人でした。
これを割合に直すと「9.9%」となります。
(※前年の令和4年分は9.6%)
「ウチは財産なんてないから」と思っていても、10人に1人という数字は、決して無視できない確率ではないでしょうか。
2. 相続財産のトップは「現金・預貯金」、しかし落とし穴は「不動産」
では、相続税の対象となった方々は、一体どのような財産を持っていたのでしょうか。令和5年分の相続財産の構成比を見てみましょう。
* 1位:現金・預貯金等(35.1%)
* 2位:土地(31.5%)
* 3位:有価証券(17.1%)
* 4位:家屋(5.0%)
* 5位:その他(11.4%)
トップが「現金・預貯金」であることは、ここ数年の傾向通りです。しかし、私たちが注目すべきはそこだけではありません。
**「2位:土地(31.5%)」と「4位:家屋(5.0%)」を合計すると、36.5%**になります。
これは、相続財産の最大の構成要素が「不動産」であることを示しています。
ここに、相続税の大きな落とし穴があります。いわゆる**「資産リッチ・キャッシュプア(資産はあっても現金が少ない)」**という状態です。
相続税は、原則として「現金一括納付」です。
「財産は自宅(土地・家)と、わずかな預貯金だけ」というご家庭でも、その不動産の評価額が基礎控除を超えてしまえば、納税義務が発生します。しかし、手元に納税資金(現金)がないため、慌てて自宅を売却する…といったケースも少なくないのです。
3. 「ウチは大丈夫」が危ない2つの理由
「10人に1人なら、まだ9人は大丈夫なんでしょう?」と思われるかもしれません。しかし、以下の2つの理由から、その「大丈夫」という自己判断は非常に危険です。
理由1:基礎控除のラインを再確認していますか?
現在の相続税の基礎控除額は、**「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」**です。
例えば、法定相続人が「配偶者と子2人」(合計3人)の場合、基礎控除額は
3,000万円 + (600万円 \times 3人) = 4,800万円
となります。
一見大きな金額に見えますが、
「(都市部や郊外の)自宅の土地・建物」+「退職金」+「生命保険金」+「預貯金」
これらを合計すると、4,800万円というラインは決して高すぎるハードルではありません。特に、不動産の評価額をご自身で正しく把握されている方は稀です。
理由2:相続税の税務調査は「厳しい」
相続税は、他の税金と比べても税務調査の対象となりやすい税目です。令和5年度の実地調査1件あたりで見つかった申告漏れの課税価格は、平均で約3,208万円にも上ります。
「このくらいならバレないだろう」という預貯金の移動や、土地の評価の誤りは、高い確率で指摘されます。その結果、本来納めるべき税額に加え、重いペナルティ(過少申告加算税や重加算税)が課されることになります。
4. まとめ:最善の対策は「知ること」と「生前準備」
令和5年の統計が示す「課税割合9.9%」という数字は、全国平均です。地価の高い都市部(例えば東京国税局管内では15.4%)では、さらにその割合は高くなります。
相続税対策の第一歩は、「まず、自分たちは対象になるのか?」を正しく知ることです。
そして、もし対象になる可能性があるのなら、対策は**「相続が発生する前(=生前)」**にしかできません。相続が発生した後では、できることは限られてしまいます。
* 財産の正確な評価(特に土地)
* 生前贈与の活用
* 生命保険の非課税枠の利用
* 遺言書の作成
これらを通じて、円満な相続と、家族の負担を減らす納税プランを設計することが可能です。
「ウチは大丈夫かな?」と少しでも不安に思われたら、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。まずは現状を把握することから一緒に始めましょう。